大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2410号 判決

被告人 黄水錫

〔抄 録〕

一、弁護人甲の控訴趣意第二点。

前記原判示第一犯罪事実認定の資料として原判決に引用されている諸証拠によれば、被告人が原判示日時場所において原審相被告人Xと共謀して前記A、BおよびCから買受けたものは盃、香炉、鎖、指環、メタル、腕輪、その他の金(きん)を含有する金属を吹いて地金としたもので、その売買当時その当事者は専ら同地金中に含有されている金(きん)を目標として評価したことを認めることができる。而して貴金属管理法第一二条により金地金の取引を制限する所以は、金に対する実際の価値を重視し、同金属の配置を国民経済上最も有効な用途に集中せしめるために同金属の移動を政府の管理にかからしめるにあることは明らかであり、従つて同法所定の金地金とは、苟くも製錬又は採取の過程を経てよう解・加工等により比較的使用し易い状態に在る金を含有し而も現に加工品としての形態を具備せず且つその取引当事者においても專らその金の価値に評価の基準を置いているものたる以上その金が鉱石等から新たに製練又は採取されたいわゆる新産金たると既に一旦加工品中によう解使用された後再び変状して地金とされたものたるとを問わず汎く包含するものと解するを相当とする。この見地よりすれば、原判示物件の取引は、まさに同法にいう金地金の取引に該当し、従つて之に対し同法第一二条第二四条第四号を適用処断した原判決には所論の如き擬律上の錯誤はない。論旨は理由がない。

二、弁護人乙の控訴趣意第三点。

原審証人A、同B、同C、同Dの各供述記載等原判決掲記の証拠によれば本件金地金取引犯行の捜査については司法警察員たるAが金の買主の体をよそおいBおよびCと連絡し、いわゆるおとり捜査の一態様を呈して前記Xを逮捕し、これより順次他の犯行者も検挙されるに至つたこと所論のとおりなると同時に、その捜査の着手時期は本件犯行ありし後たる昭和二五年一〇月末なることも亦明らかである。而して斯のように既に犯行成立の後之を捜査に当る場合は、初めから捜査職員等が犯行を誘発若しくは助成した上その犯人を検挙する場合とも異り、犯人に対する関係において穩密裡に若干の方策を講じ犯人の予測外の方法によつて之を検挙するが如きことあるも、之は寧ろ捜査としての自然的傾向というべく、その際特に強制、脅迫等の事態に渉らざる限り、当然違法の捜査手段となることなく且つ同捜査の結果起訴ならびに判決あつた場合にも直ちにその訴訟手続は判決に影響ある違法性を来すものとなすべき理由はない。而して本件捜査については単に既成の犯罪についての捜査にいわゆる「おとり」の方法によつたということはあつても、訴訟手続上原判決の効力に影響を及ぼすべき何等の事由も認め難いから、原判決に関し此の点からみて訴訟手続上の違法又は事実誤認ありとなすは肯認し得ない。論旨は理由がない。

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